便が出ない、お腹が張るなどお通じで辛い症状が出る便秘。
便秘で悩む人は増加傾向にあります。
年齢を重ねるとともに腸の機能が落ちてきて便秘になりやすくなり、頭痛、肩こり、糖尿病、うつ病、大腸がんなどのリスクを高める可能性があります。
暑い時期になると腸に行く水分量が減ってお通じが硬くなる人が多くなってきます。
腸の老化が進むことで便秘がますます悪化し、肌荒れや疲労感を引き起こし体臭などの原因にもなります。
便秘を悩み過ぎることによりうつ病を発症する恐れもあります。
■便秘について
2017年に発表された慢性便秘ガイドラインによると、便秘の定義は本来 体外に排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態とされています。
つまり毎日出てもお腹の張りなどを感じたりすれば便秘ということになります。
■暑い時期の便秘に注意
暑くなり体内の水分が不足すると、便に含まれる水分を腸が吸収して便が硬くなっていきます。
それが続くと便が腸の中で停滞し詰まってしまいます。
■便秘でお腹が張るのは?
便秘によって肛門近くのS状結腸に便が溜まりフタをした状態になってしまいます。
するとガスが外に出られず腸を圧迫し、お腹が張ると感じるようになります。
■便秘が原因の逆流性食道炎
逆流性食道炎とは、胃液や食べ物が食道に逆流する病気のことをいいます。
食道が刺激を受け粘膜がただれたりします。
便秘によって溜まったガスが胃を圧迫することで胃液が逆流してしまうことがあります。
■朝食を抜くのは腸によくない
蠕動運動(ぜんどううんどう)とは、ご飯を食べるなどの刺激で腸が動く神経反応のことをいいます。
蠕動運動によって便が腸内を移動します。
蠕動運動が活発な朝にご飯を抜くと、お通じのリズムを阻害してしまいます。
■腸の老化
朝ご飯を食べない、食物繊維不足などで便秘が続き腸機能が低下すると腸の老化が進んでしまいます。
■腸内細菌のバランス
腸管機能が落ちてきて腸内細菌そうが悪くなってくると、善玉菌が減って悪玉菌が増えてきます。
するとますます腸の中で腐敗が起こり悪玉菌が増えるという悪循環におちいってしまいます。
そのため便秘の改善には食生活の見直しが重要になります。
■食物繊維摂取量
便秘の人の多くが意識するのが食物繊維摂取量。
1日の食物繊維摂取量は、男性が20g以上、女性が18g以上といわれています。
現代の日本人の平均摂取量は男女ともに15g未満となっています。
■炭水化物を抜くことが便秘の原因になる
炭水化物は糖質と食物繊維で出来ているため、炭水化物を抜いてしまうと食物繊維摂取量が減ってしまい便秘の原因となることがあります。
■不溶性食物繊維と水溶性食物繊維
食物繊維には水に溶けにくい不溶性食物繊維と水に溶けやすい水溶性食物繊維があります。
不溶性食物繊維は便の材料となり便のかさを増やして排泄を促進してくれます。
しかし不溶性食物繊維を摂り過ぎるとお通じが硬くなってしまいます。
水溶性食物繊維は水に溶けてドロドロになるため、便を柔らかくして滑りをよくする役割があります。
不溶性食物繊維と水溶性食物繊維をバランス良く摂ることが大事になります。
●不溶性食物繊維
サツマイモ、カボチャ、ブロッコリーなど
●水溶性食物繊維
サツマイモ、アボカド、リンゴ、ニンジンなど
■腸内環境セルフチェック
・便が細くなった
・便が硬くなった
・排便時間が長くなった
・残便感がある
・お腹が張る
2つ以上当てはまれば腸の老化が進んでいる可能性があります。
●それぞれの項目の原因
・便が細くなった →食物繊維の不足
・便が硬くなった →腸の動きが鈍く水分を吸収し過ぎ
・排便時間が長くなった→筋力の低下
・残便感がある →直腸の感覚異常
・お腹が張る →便やガスが溜まっている
■女性と便秘の関係
女性ホルモンの一種である黄体ホルモンが分泌されると腸の動きが悪くなることがあります。
腸の動きを抑制しやすく、便が硬くなり排便しにくくなることがあります。
夏場の冷房による温度差でお腹が冷えて便秘の原因となることもあります。
外出先でトイレを使うのを嫌がり、我慢しているうちに便意を失ってしまい便秘の原因となることがあります。
男性も年齢とともに腸機能が低下するため65歳以上になると便秘が増えてきます。
■水溶性食物繊維で腸を若返らせる
水溶性食物繊維は腸の中に入ると善玉菌のエサになって分解され酪酸(らくさん)というものが作られます。
酪酸(らくさん)とは大腸にとって一番大事なエネルギー源で、酪酸がとれないと腸は活発に働きません。
酪酸は腸内の細菌バランスの改善にも効果があります。
水溶性食物繊維は酪酸を腸内で増やすのに重要な役割をになっています。
水溶性食物繊維が腸内細菌によって分解されて酪酸が作られます。
そのため酪酸の原料となる水溶性食物繊維を食べることが腸を若返らせる近道になります。
■キウイフルーツ、大麦で腸を若返らせる
キウイフルーツ・大麦には水溶性食物繊維が豊富に含まれています。
いつもの食事にキウイフルーツや大麦をプラスすることで便秘改善効果が期待できます。
ただし食生活が乱れている場合は食生活の見直しも必要になります。
■水溶性食物繊維が豊富な食材
・キウイフルーツ
・大麦
・タマネギ
・柑橘類
■お腹をマッサージして便秘を改善
入浴中に右から左にお腹をマッサージするのも便秘改善効果が期待できます。
■夏場の水分補給に要注意
冷たい飲み物をかぶ飲みして腸を冷やすと腸の動きが鈍くなってしまいます。
その結果、便秘が悪化することもあるので注意が必要です。
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松生クリニック 院長 消化器専門医
松生 恒夫(まついけ つねお)先生
これまで4万人以上の腸を診てきた第一人者です。