虫歯菌が小さな脳出血の原因、口ストレッチ(唇・頬・舌)で唾液を増やし脳出血予防、悪玉虫歯菌

人の名前や言葉が出てこないという人の中で、近い将来大変な事態を招く可能性を秘めた人がいます。
それが脳の血管が破れる脳出血です。
脳出血は高血圧などが原因で、ある日突然激しい頭痛とともに意識不明になることもあります。
脳出血は数時間以内に処置しなければ命を落とす危険もあります。

これまでの脳出血は強い症状が出て初めて診断されるものでしたが、MRIの進歩により無症状であっても小さな脳出血があることが分かってきています。
人の名前や言葉が出てこないという人中には、すでに小さな脳出血が起きている可能性があります。

小さな脳出血を早期発見して将来の大出血を予防することが大事になります。

■小さな脳出血の危険性テスト
●1分間言葉思い出しテスト
50音のある一文字から始まる言葉を1分間に何個言えるかをみます。
例えば「あ」というお題なら、雨、赤い、歩く、アリといった具合に「あ」から始まる言葉を名詞でも動詞でも何でもよいので出来るだけ多く言います。
ただし人名や地名など固有名詞はNGです。
また「雨」と「飴」など読み方が同じ言葉や「雨」と「雨音」など同じ単語が重複する言葉はNGになります。
言ってしまった場合は、どちらか一つだけカウントします。
成績の悪い人に小さな脳出血が発見されやすいことが分かっています。
1分間に10個以上答えられるかどうかテストします。
10個未満なら小さな脳出血の可能性が疑われます。

小さな脳出血が一つでもあると大きな脳出血のリスクは10倍、認知症のリスクが2倍になるといわれています。

■小さな脳出血による脳への影響
小さな脳出血は脳の比較的深い部分の基底核(きていかく)という場所に起こりやすくなっています。
そこに微小な出血が起こると、言語を次から次へと紡ぎだすような機能にも障害が起こりやすくなります。

脳の中で記憶している言葉を口に出す能力は、脳の中央にある基底核(きていかく)と呼ばれる部分がになっています。
基底核にある毛細血管は非常にもろく小さな脳出血を起こしやすいといわれています。
そのためひとたび出血すると周りの神経の情報伝達がスムーズにいかなくなり、人の名前や言葉がなかなか出てこないという症状が出る可能性があります。

■脳出血の原因
・大きな脳出血→高血圧
・小さな脳出血→虫歯菌

脳の血管の内壁は血管内皮細胞で覆われています。
年齢と共に動脈硬化が進行すると血管内皮細胞が剥がれてきます。
血管内皮細胞が剥がれた部分に虫歯菌がくっつくと血管を溶かして出血が起こります。

■血管を破壊する悪玉虫歯菌
口の中で繁殖し歯を溶かす虫歯菌は小さな脳出血をも引き起こし、命に関わる脳の大出血のリスクを高めてしまいます。
口腔内の虫歯菌、その中でも特に悪玉虫歯菌が細い血管にくっつき、それを最終的に破壊してしまいます。

悪玉虫歯菌は特に血管にくっきやすく、小さな脳出血を引き起こす性質があります。
口の中で悪玉虫歯菌が異常に増えると口腔内の傷口などから体内へ侵入します。
通常であれば免疫細胞が処理しますが、数が多過ぎると対処しきれず全身を循環してしまい、やがては脳の毛細血管にまで到達します。
動脈硬化などで剥がれた血管壁に付着すると、血管を構成するタンパク質を徐々に溶かして小さな穴を開けて出血すると考えられています。

悪玉虫歯菌は今現在虫歯がない人でも、一度でも虫歯になったことがある人なら口の中で繁殖している可能性があるといわれています。
悪玉虫歯菌は他人から感染したもので、親から口移しで食物をもらう時などに感染すると考えられています。
成人後はほとんど感染しないそうです。
悪玉虫歯菌がいたとしても数が異常に増えなければ問題ありません。
悪玉虫歯菌の数を異常に増やさないようにすることが大切になります。
そのためには歯磨きで悪玉虫歯菌を抑えることが必要になります。

■脳出血が起きる人と起きない人の違い
もともと人の身体には虫歯菌を殺す働きが備わっています。
唾液の中に含まれるラクトフェリンという殺菌成分が悪玉虫歯菌を抑えてくれます。
悪玉虫歯菌を増やさないポイントは唾液をしっかり出すことです。
小さな脳出血を起こしていた人は、唾液不足によって悪玉虫歯菌が異常増殖していた可能性があります。

唾液の分泌量も加齢と共に減少してきます。
夜中のどが渇いて目覚めたり、食べ物が飲み込みづらい人は要注意です。
自覚がなくても唾液不足の可能性があります。

■口ストレッチで唾液アップ
唾液は舌下腺、耳下腺、顎下腺の3箇所から分泌されます。
そこを3種類の動きで唾液腺を刺激することで常時唾液の分泌量を良くしましょう。

●唇ストレッチ
唇をウーとすぼめ約5秒キープします。
イーと横に伸ばして約5秒キープします。
ウーイーを1セットとして5回繰り返します。

●頬のストレッチ
口を大きく膨らませ約5秒キープします。
思い切りしぼませて約5秒キープします。
膨らませる・しぼませるを5回繰り返します。

●舌のストレッチ
舌を大きく突き出して左右上下とゆっくり動かします。
5回繰り返します。

この3種類を1セットとして、朝昼晩1日3回を目安に行うことで唾液の分泌量アップが期待できます。
脳出血のリスクを下げるという意味では継続することが非常に重要になります。

■脳の治療の名医(2019年5月時点)
国立循環器病研究センター
脳神経内科部長
猪原 匡史(いはら まさふみ)先生

脳出血や脳梗塞など脳の病の患者さんの治療に携わる一方、脳の血管の異常が高齢者の健康にどのような影響を及ぼすかを中心に様々な研究を世界に先駆け発表しています。
脳卒中や認知症など脳の病の撲滅を目指し奮闘する日本を代表する脳の名医です。