くも膜下出血は脳動脈に出来た瘤が破裂して出血してしまう病気。くも膜下出血治療にはクリッピング手術と脳動脈瘤コイル塞栓術。くも膜下出血の予防には喫煙、高血圧、過度の飲酒に気をつけることが大切です
■くも膜
くも膜とは、脳や脊髄などの中枢神経を包む薄い膜をいいます。
くも膜下はクモの巣のクモが語源になっています。
頭蓋骨と脳の間には、やわらかい脳を保護するために硬膜、くも膜、軟膜という3つの膜があります。
くも膜はそのうちの真ん中の膜になります。
くも膜と脳の間には脳脊髄液が流れていて、脳を守るクッションの役割を果たしています。
脳は脳脊髄液で覆われることで保護されています。
■くも膜下出血
くも膜の下の脳脊髄液が流れている空間は、動脈の通り道でもあります。
くも膜下出血とは、主に動脈に出来た瘤(コブ)が破裂して出血してしまう病気です。
脳の中は水に浸された状態で、外界から骨で守られて閉鎖されている空間になります。
その閉鎖された空間の中は動脈のの圧が高いので、動脈性の出血が起こると脳圧が急激に上がってしまいます。
通常の10倍以上もの圧力が脳にかかるとされています。
出血によって血液や脳脊髄液が溢れ出し、脳内の圧力が急激に高まることで脳内に損傷を与えてしまいます。
最悪の場合、脳の一部が頭蓋骨から押し出され、生命活動を維持できなくなることもあります。
くも膜下出血は、脳硬塞などに比べ若い人にも多いのが特徴です。
くも膜下出血は致死率は高いですが、発症率は年間5000人に1人程度です。
基本的な知識を持ち、くも膜下出血に注意することが大切になります。
脳動脈瘤を持つ人は、過度なスポーツも破裂の危険が高くなります。
■くも膜下出血の危険度チェック
●親兄弟や血縁者に、くも膜下出血の人がいる
●ついついお酒を飲み過ぎてしまう
ビールは中ジョッキ2杯以内、日本酒は1日2合以内が目安になります。
それ以上飲む人は血圧が上がりやすいので注意が必要です。
●高血圧である
高血圧は血管が傷つきやすく、動脈瘤が出来やすく、破裂のきっかけにもなります。
●タバコを吸う
タバコに含まれるニコチンが血管の膜を傷付ける作用があります。
●ストレスを溜めやすい性格である
ストレスを溜めることも血圧上昇を招く一因ともなります。
当てはまる数が多いほど、くも膜下出血の危険が高くなります。
■くも膜下出血を知らせる症状
●ハンマーで後頭部を殴られたような突然の頭痛
くも膜下出血を知らせる症状としては、ハンマーで後頭部を殴られたような突然の頭痛があります。
脳動脈瘤は、一度破裂すると再破裂することが多いとされています。
くも膜下出血は、最初の破裂で発見出来ると軽症で済むことが多いですが、問題は2度目の破裂です。
破れやすくなった脳動脈瘤が大爆発するため出血量も多く、致命傷になりかねません。
そのため最初の脳動脈瘤の破裂に伴う、今まで経験したことのない突然の頭痛を見逃さないことが大切になります。
●目の異常
くも膜下出血を知らせる症状には目の異常もあります。
片方のまぶたが垂れる、片目がまぶしい、物が二重に見えるなどの症状があります。
脳動脈瘤は目の神経近くにできることが多く、破裂寸前の脳動脈瘤は一気に巨大化するため目を動かす神経を圧迫してしまいます。
その結果、目の動きが麻痺し、片方のまぶたが腫れるという症状が出ることがあります。
同じ理由から、脳動脈瘤の破裂寸前に片目だけがまぶしくなったり、物が二重に見えることもあります。
■脳動脈瘤は最初の破裂から数日間が危険
二度目の破裂は出血量が多く、弱っている脳に大きなダメージを与えてしまいます。
最初の破裂から数日間が再破裂の危険性が高いと言われています。
いつもつ違う頭痛を感じたら一刻も早く病院を受診しましょう。
■くも膜下出血の治療
脳動脈瘤の破裂や再出血を防ぐには、クリッピング手術と脳動脈瘤コイル塞栓術があります。
クリッピング手術は、開頭手術を行い脳動脈瘤の根元をクリップで止めます。
脳動脈瘤コイル塞栓術は、カテーテルを挿入し、コイルを脳動脈瘤の中に詰め込み血液の侵入をふせぎます。
■くも膜下出血の予防
くも膜下出血の予防のためには、喫煙、高血圧、過度の飲酒に気をつけることが大切です。
くも膜下出血の遺伝が気になる人は、脳ドックで脳動脈瘤の有無を確認しましょう。