恐怖症は過度に恐怖の対象を回避したり、恐怖感や苦手意識が強化され発症します。PTSDは生死を分けるような体験の後に生じるストレス障害で明確な恐怖の対象があります。バーチャルリアリティ暴露療法
■恐怖症(きょうふしょう)
恐怖症は決して他人事ではなく、何時なんどき何がきっかけで発症するか分からない病気です。
恐怖症の引き金は突然もしくはトラウマで、社会生活に支障をきたす場合に恐怖症とみなされます。
日本人の20人に1人が、一度は恐怖症を経験すると言われています。
うつ病の根底には恐怖症がひそんでいるケースが多いとも言われています。
恐怖症はより深刻な精神疾患を起こしかねない病気でもあります。
恐怖症になりやすい人は、神経質な人や完璧主義者などに多いとされています。
■恐怖
恐怖とは、自らの生存を保つため生物が基本的に持つものです。
感覚器官がとらえた情報は、脳にある扁桃体(へんとうたい)に伝わります。
これは喜怒哀楽などの感情を司る部位です。
この扁桃体や記憶などによって、その感覚情報を恐怖と認めるかどうかを決めます。
恐怖を感じること自体は本能的な行為です。
しかしそれ以降にも過度にその恐怖の対象を回避するようになると、恐怖感や苦手意識が強化され恐怖心に発展してしまいます。
■恐怖を感じたときの身体変化
一般に扁桃体が恐怖と判断した場合、脳から自律神経に指令が出て交感神経が優位になります。
すると筋肉に十分なエネルギーを与えるため脈拍が早くなり、呼吸が激しくなります。
瞳孔(どうこう)が開くのは相手を良く見るためで、汗をかくことで手をすべりにくくし、体温が下がるのは体表面の熱が筋肉に奪われるためになります。
これは恐怖の対象と戦うためか、それから逃げるために体が準備している生理反応になります。
■PTSD(心的外傷後ストレス障害)
PTSD(心的外傷後ストレス障害)とは、生死を分けるような体験の後に生じるストレス障害です。
PTSDは明確な恐怖の対象があります。
恐怖症は当事者にとっては大変ですが、他人には理解されにくい物を極端に怖がります。
■特定のものを怖がる特定恐怖症
・閉所恐怖症(へいしょきょうふしょう):狭い所に耐えられない
・高所恐怖症(こうしょきょうふしょう):高い所が苦手
・尖端恐怖症(せんたんきょうふしょう):尖った尖端が恐い
・嘔吐恐怖症(おうときょうふしょう)など
■社交不安障害
・対人恐怖症(たいじんきょうふしょう):他人を極端に怖がる
・視線恐怖症(しせんきょうふしょう)
・赤面恐怖症(せきめんきょうふしょう)など
■脅迫性障害
・赤面恐怖症(せきめんきょうふしょう)
・確認恐怖症(かくにんきょうふしょう)など
■恐怖症の治療法
恐怖症の治療法としては、薬物療法、認知行動療法、リラクゼ-ション法などがあります。
認知行動療法には、バーチャルリアリティ暴露療法(ばくろりょうほう)などがあります。
リラクゼ-ション法には、腹式呼吸(ふくしきこきゅう)や漸進的筋弛緩法(ぜんしんてききんしかんほう)などがあります。
心の緊張を取るため、リラクゼ-ション法で身体の緊張を取り恐怖感を減少させます。
●バーチャルリアリティ暴露療法(ばくろりょうほう)
コンピューターによって映し出された架空の場面で、あたかもその場面を体験しているかのような景色、音、振動などをバーチャルリアリティで擬似体験します。
これを繰り返すことで恐怖感をもたらすものに慣れていく治療法です。
恐怖を克服するためには、回避しない、目標を作るなども大切になります。
●腹式呼吸(ふくしきこきゅう)
3秒かけて鼻から息を吸います。
6秒かけてゆっくりと口から吐きます。
このときヘソで呼吸しているようにイメージします。
息を吐くときは副交感神経が優位になり、緊張を抑えてくれます。
1日1回最低5分の腹式呼吸で効果的が期待できます。
●漸進的筋弛緩法(ぜんしんてききんしかんほう)
7秒間力を入れ、12秒間力を抜きます。
これを手や顔、肩、背中などで行います。
副交感神経がを強制的に優位にさせ、恐怖を感じにくくします。