COPD、肺癌、肺炎、隠れ脳梗塞・無症候性脳梗塞による肺炎、肺炎予防

COPDは長年の喫煙により起こり、肺胞が破壊され呼吸困難の危険性。肺癌は進行するまで自覚症状がないため早期発見が大切。
肺炎は細菌やウイルスによる感染ですが、肺炎の原因には加齢や生活習慣病が招く免疫機能の低下と隠れ脳梗塞・無症候性脳梗塞による肺炎があります。
飲み込む力を鍛えることで肺炎予防になります。

■COPDについて
COPDとは慢性閉塞性肺疾患(まんせいへいそくせいはいしっかん)という病です。
COPDの主な原因は、長年の喫煙習慣です。
その結果、肺が炎症を起こし気管が狭くなるだけではなく、肺胞が破壊され呼吸困難になってしまいます。
COPDは時限爆弾のような病で、20年30年という長年の喫煙の蓄積ではじめて発症するといわれています。

■肺癌について
肺癌は数ある癌の中でも治療が難しいものの一つです。
肺癌は進行するまで自覚症状がほとんどないため、発見しても手術できるケースは3人に1人ほどといわれています。
そのため男性の1年間の癌による死亡者数の中では肺癌が第一位、女性でも第二位となっています。
日頃の健康診断などで早期に発見することが大切な病気です。

■肺炎について
肺炎とは、何らかの原因によって細菌やウイルスが肺の中へと侵入し、肺に炎症を起こす感染症です。
肺炎の患者数は年々増加し、脳疾患を抜いて日本人の死亡原因第三位となっています。

■肺炎の原因
肺炎の主な原因は、細菌やウイルスによる感染です。
多くは加齢や生活習慣病が招く免疫機能の低下です。
免疫機能が低下すると、肺に入った細菌の繁殖をゆるしてしまい肺炎へと至ってしまいます。

■隠れ脳梗塞による肺炎
近年、免疫機能が低下していなくても肺炎を起こすことが多くなってきています。
特に寝たきりや生活習慣病で免疫力が落ちた場合は肺炎になりやすいですが、肺炎が思いもよらない病気で起こってくることがいわれています。
それが隠れ脳梗塞です。
肺炎で亡くなる人の95%以上が65歳以上の高齢者とされています。

■無症候性脳梗塞(むしょうこうせいのうこうそく)について
無症候性脳梗塞(むしょうこうせいのうこうそく)とは、隠れ脳梗塞のことをいいます。
動脈固化などによって脳の奥にある細い血管が詰まり、脳の一部が壊死してしまう病気です。
無症候性脳梗塞のリスク要因としては加齢や高血圧があり、加齢に加えて高血圧が発症リスクを高めると考えられています。
壊死している部分が小さいとほとんど症状はあらわれません。

■隠れ脳梗塞・無症候性脳梗塞と肺炎について
私達のノドの奥、食道と気管の分かれ道には喉頭蓋(こうとうがい)というフタのような組織があります。
水などを飲む時には、このフタがすみやかに閉まり気管に入らないようになっています。
これが反射機能(はんしゃきのう)と呼ばれた働きです。
液体を飲み込むと気管のフタが閉まって食道をだけに液体を送り、唾液などに含まれる細菌が肺へと侵入しないように防いでくれています。
これは睡眠中でも同じことで、唾液を飲み込んでも反射的にフタが閉まります。
万が一細菌を含んだ唾液が気管に入っても、反射機能である咳をすることで気管の奥に入ることを自然に防いでいます。

実は隠れ脳梗塞が睡眠中の反射機能を低下させることがあります。
隠れ脳梗塞による神経回路の障害で、脳からノドへの命令が上手く伝わらなくなり、反射機能をコントロールする神経伝達物質そのものも減少してしまいます。
つまり反射的に気管を閉じたり、咳を出すことが出来なくなる危険性があります。
結果、肺の中に細菌が侵入して肺炎を引き起こしてしまいます。
脳の深いところに脳梗塞がある人の肺炎発症リスクは、通常の2.1倍〜3.6倍にもなります。

無症候性脳梗塞はあまり症状も出ず、大きな問題を引き起こすことも少ないですが、飲み込む機能の低下につながって肺炎を起こすことがあるので、特に高齢の人は日頃から注意をすることが大切です。

■飲み込む力チェック法
人差し指と中指でノド仏を軽く押さえるように挟みます。
口の中にある唾液を飲み込みます。
するとノド仏が人差し指を越えて上に動きまた戻るのが分かります。
この唾液の飲み込みを30秒間で何回できるかを数えます。
唾液を飲み込んだときの回数で飲み込む機能をチェックします。
5回以下は飲み込む力の低下の恐れがあります。
特に2回以下の人は肺炎に要注意です。

■肺炎予防トレーニング
背筋を伸ばしてイスに座ります。
おでこに手の平を当てます。
頭が動かないように手で押さえ、おへそを覗き込むようにします。
5秒間、手の平とおでこで押し合いをします。
1日5回程行います。
反対の手でノド仏を触った時に筋肉が硬くなっていることを確認します。
このトレーニングを食事の前に行います。
飲み込む機能が低下している人は、毎食後に行うとよいです。

■肺炎予防
肺炎は口の中の細菌が肺の中に入ってきて炎症を引き起こすので、口の中をきれいにすることが肺炎予防につながります。
可能であれば毎食後の歯磨きが大切です。
特に寝る前の歯磨きは細菌の侵入を防ぐためにも丹念に行うと肺炎予防に効果的です。

■呼吸器内科の名医(2013年11時点)
横浜市立大学附属 市民総合医療センター 呼吸器病センター 部長
金子 猛(かねこ たけし)先生
ぜんそく、肺癌、肺炎など呼吸器系の病気全般に及ぶ幅広い知識と経験を武器に、多くの患者さんを救ってきた呼吸器内科の名医です。