不整脈は自己チェックが大切!期外収縮、徐脈、頻脈、心室細動、心房細動

■不整脈について
不整脈には健康な人でも起こる問題のない不整脈から、命に関わる危険な不整脈まであります。
そのため自分がどのタイプの不整脈であるかを知っていることも大切になります。
不整脈の全てが病気ではありません。
正常な心臓は規則的に1日十万回動いていますが、脈の規則性が一瞬でもなくなることも不整脈とされています。
たまに少し乱れることは誰にでも起こることです。
不整脈で受診される人の約9割は治療しなくても問題がない不整脈とされています。
ただし残りの1割は命に関わる危険な不整脈もあるので注意が必要です。

■心臓の働き
心臓の内部は右心房(うしんぼう)・右心室(うしんしつ)、左心房(さしんぼう)左心室(さしんしつ)という4つの部屋に分かれています。
心臓は全身に血液を送り出すポンプの役割を果たしていますが、実は弱い電気を発生させて収縮しています。
右心房には洞結節(どうけっせつ)という場所があり電気を作っています。
洞結節で作られた電気は、まず心房に流れて心房が収縮します。
そして房室結節(ぼうしつけっせつ)というところに届いて心室に電気が流れて心室が収縮します。
このように心臓の筋肉は電気の刺激を受けると収縮し、電気の刺激がなくなると緩んで拡張します。
心房と心室が一定のリズムで収縮と拡張を繰り返すことを拍動(はくどう)といいます。

■不整脈のタイプ
拍動のリズムや乱れ方によって、脈が飛ぶタイプ、脈が遅いタイプ、脈が速いタイプに分けられます。
不整脈のタイプは、心臓の筋肉の電気的変化を波形にしてあらわした心電図を調べることで分かります。
正常な拍動では1分間に60〜100回程度で規則正しいリズムになります。

●脈が飛ぶタイプ(期外収縮)
脈が飛ぶタイプは、正常な拍動の間に不整脈の拍動が起こるタイプで期外収縮(きがいしゅうしゅく)と呼ばれています。
一瞬血液が行かなくなるので動悸や胸の不快感などの症状が起こります。
期外収縮(きがいしゅうしゅく)は健康な人にも起こることがあり、多くの場合心配ありません。
ただし100回の拍動のうち10回以上 期外収縮(きがいしゅうしゅく)が起こる場合は治療が必要になります。

●脈が遅いタイプ(徐脈)
脈が遅いタイプを徐脈(じょみゃく)といいます。
1分間に拍動が50回未満と遅くなり、間隔が長くなったりします。
徐脈(じょみゃく)は、洞結節からの電気の発生が遅くなったり、房室結節からの電気の受け渡しがうまくいかないために起こります。
徐脈(じょみゃく)は直接的に命に関わることは少ないですが、心臓から送り出される血液が少なくなるために息切れやだるさなどの症状が起こります。
心電図の波形が途絶えている場合は一時的な心停止状態におちいっているため、脳への血流が不足してめまいや失神、心不全などを起こす場合もあります。

●脈が速いタイプ(頻脈)
脈が速いタイプを頻脈(ひんみゃく)といい、頻拍(ひんぱく)と細動(さいどう)に分けられます。
頻拍(ひんぱく)とは、1分間に100回以上の拍動が起こる不整脈をいいます。
細動(さいどう)は、1分間に電気信号が250回以上送られるために信号が早すぎて心臓がついていかなくなり、拍動は不規則で弱いものになります。

頻拍(ひんぱく)では、動悸、胸の痛み、不快感、失神などの症状が起こります。
さらには突然死、脳梗塞、心不全などを誘発することがあります。
突然死の原因になるのが、心室に細動が起こる心室細動(しんしつさいどう)です。
脳梗塞の原因になるのが、心房に細動が起こる心房細動(しんぼうさいどう)です。

■心室細動(しんしつさいどう)による突然死
心室細動(しんしつさいどう)は心室がけいれいんしたような状態になり、心室が収縮しなくなるため血液が全身に送られなくなります。
発生から数分で死に至ることもあります。

■心房細動(しんぼうさいどう)による脳梗塞
心房細動(しんぼうさいどう)は心房がけいれんしたような状態になり、心房がきちんと収縮しないため心室への血液を送り出しにくくなり、心房内で血液がよどんで血のかたまり血栓が出来やすくなります。
心房細動(しんぼうさいどう)によって作られた血栓は、血液に乗って運ばれて脳の血管に詰まると脳梗塞を引き起こします。

■不整脈の原因
・加齢 ・心臓の病気 ・高血圧 ・COPD ・甲状腺 ・薬 ・生活習慣 ●加齢が不整脈の原因
不整脈は60歳以上になると増えてきます。

●心臓の病気が不整脈の原因
心筋梗塞は冠動脈が狭くなったり詰まったりすることで起こります。
心筋症は心臓の筋肉に異常があって心機能が低下します。
心不全は心臓のポンプ機能が低下します。
心臓弁膜症は心臓の中にある弁に障害が起きて血液を送り出す機能に異常が生じます。

●高血圧が不整脈の原因
血圧が高くなると心臓への負担が増えるために心臓が大きくなる心肥大(しんひだい)になります。
心肥大(しんひだい)になると不整脈が起こりやすくなります。

●COPDが不整脈の原因
重い肺の病気。

●甲状腺(こうじょうせん)が不整脈の原因
甲状腺(こうじょうせん)の病気も不整脈の一因となります。

●薬が不整脈の原因
降圧薬(こうあつやく)や抗うつ薬の一部には自律神経や心臓の電気の発生に影響する成分を含んでいるものがあり不整脈の原因となることがあります。
また頻拍(ひんぱく)の治療薬である抗不整脈薬が効き過ぎて、必要以上に脈を遅くしてしまい不整脈を引き起こすことがあります。

●生活習慣が不整脈の原因
・ストレス
・睡眠不足
・過労
・喫煙
・アルコールやコーヒーの摂り過ぎ
・肥満

交感神経を刺激して電気の発生に異常を及ぼし不整脈を引き起こすことがあります。

■不整脈の自己チェックが大切
毎日自分で脈をとり調べることが大切です。
手首の親指側を人差し指・中指・薬指で触り、前後移動するなどして脈を探します。
ポイントは指の腹で脈をとることです。
脈を感じたら10秒くらい脈をとり、少しおかしいと思ったらさらに10秒間脈をとります。
規則性がない場合は不整脈の疑いがあります。
1分間に60〜100回程度で規則正しいリズムであれば正常です。
脈をとる時間帯は起床時か就寝前がよいです。

脈の乱れに加えて、めまい、だるさ、動悸、息切れ、失神、胸部の痛み、不快感などの症状がある場合は病院を受診した方がよいです。
健康な人でも正常なときに自分の脈をとって知っておくことも大切です。

■不整脈治療の名医(2017年1月時点)
心臓血管研究所付属病院 所長(循環器内科)
山下 武志(やました たけし)先生
不整脈の診断と治療のエキスパートです。